● 本当に、嗅ぐだけで効果があるの?
いままでに勉強したエッセンシャルオイルの特徴をふりかえってみると、そこには必ず健康効果や、心・体・肌にあたえるエッセンシャルオイルの効能・効果が載っています。一つのエッセンシャルオイルが、よくもここまで・・・と思うくらい、実に様々な効能・効果をエッセンシャルオイルは持っています。それにしてもこれらの効果は、本当に単に香りを嗅ぐだけで得ることができるのでしょうか?その答えは、yes。心ばかりでなく、肌や体に対する効果であっても、香りを嗅ぐだけで一定の効果があるといわれています。もちろん、直接肌につけた場合のほうがいい場合もありますが(筋肉痛などの場合、ただ嗅ぐよりは、ローズマリーオイルをブレンドしたマッサージオイルでマッサージするほうが効果的でしょう)、基本的には嗅ぐことによって、すべての健康効果が得られると思って間違いないのです。
● 香りは人の脳に直接働きかける
ではなぜ、嗅ぐだけでこんなにいろいろな効果を得ることができるのでしょうか?その応えは、人がなぜ香りを感じることができるのかを知ると、わかってきます。
私たちがいい香りを鼻から吸い込むと、その香りは空気とともに、まず鼻腔の上にある嗅裂という部分に流れていきます。嗅裂にある嗅上皮という部分には、嗅細胞と呼ばれる特殊な細胞が2000万個から5000万個ほどあり、この細胞に香りの分子が届くことにより、私たちは香りを感じることが出来ます。
ここで注目したいのは、匂いの分子が嗅細胞に届くと、その刺激が「電気信号」となって脳に送られるということです。どんな匂いの分子も、分子の形で脳に直接届くことはなく、必ず電気信号に変換されるのです。そして、電気信号に変換された香りの刺激は、脳の中に届き、それぞれの香りの信号に反応した生理活性物質(ホルモンなど)が分泌されるために、香りは心と体の双方に効果をもたらすことができるのです。
● 実験! 香りのメカニズム
これだけだと、ちょっとわかりずらいかもしれませんね。ここで一つ、例を見てみることにしましょう。お手持ちの、ラベンダーオイルの香りを嗅いでみて下さい。今、あなたが嗅いだ香りの分子は、まず鼻の奥の嗅細胞に届けられました。そこからさらに電気信号となり、脳にその刺激が届けられます。すると脳の中では、香りの刺激により、「セロトニン」という物質が分泌されます。そう、今あなたの頭の中には、セロトニンという物質が多く分泌されているのです。そしてこのセロトニンこそ、自律神経のバランスを整え、気持ちや体を鎮静させてくれる働きをもつ物質なのです。
いかがですか?このように、香りは脳に直接働きかけるからこそ、私たちの心と体の双方をコントロールし、ベストバランスに持っていくことができる、というわけなのです。
香りの研究は近年はじまったばかり。これらの研究が進むにつれ、さらにいろいろなことがわかってくることでしょう。
● 脳には、嗅ぐための特別な場所がある
さて、いままで電気信号に変えられた香りは、「脳」に直接届く、というお話しをしてきました。では一体、脳のどの部分に刺激が届くのでしょうか?
実は、脳には香りの刺激が届けられる特別な場所があります。それが香りを嗅ぐための脳、いわゆる「嗅脳」といわれる部分です。嗅脳は、最近では「大脳辺縁系」と呼ばれることが多いようですが、ここでは香りと脳の関係をわかりやすく理解していただくため、嗅脳と呼ぶことにします。
人の脳は、動物脳ともいわれる嗅脳の上に、大脳新皮質といわれる新しい脳が覆い被さるようにして進化してきました。大脳新皮質は理性を司り、人の知的な活動を支えています。さらに、嗅覚以外の五感(視覚、聴覚、味覚、触覚)の刺激が届く場所でもあります。それに対して、嗅脳は本能を司り、快・不快や、喜怒哀楽といった感情、そして動物として生きていくために必要な機能(水分調節、体温調節など)を司っています。
我々はストレスを受けると、大脳新皮質よりも嗅脳にダメージを受けてしまいます。大脳新皮質はロボット脳とも言われ、あまり疲れを感じないのに対して、嗅脳の方はストレスに弱いのです。嗅脳がストレスにやられてしまうと、私たちの体は生きる力を失ってしまいます。自律神経が乱れたり、眠れなくなったりしてしまうのは、ストレスにより、人が生きていくのに欠かせない水分調節や体温調節を司る脳である嗅脳が疲れているからなのです。
香りは、この嗅脳に直接刺激が届きます。そして体内のバランスを整える生理活性物質を分泌させます。だからこそ、疲れた嗅脳を元気にしたり、落ち着かせてくれたりすることができるのです。
● 香りの刺激、その他のルート
いままでは、香りが嗅脳に直接働きかけ、その結果さまざまな効果をもたらすことをみてきました。ここではさらに、香りが体に働きかける別のルートも見てみることにしましょう。
香りの成分は、鼻に入ったあと、一部はそのまま肺へと届き、そこから血管を通して全身に運ばれます。また、お風呂にエッセンシャルオイルをたらしたり、マッサージオイルにエッセンシャルオイルをブレンドしてマッサージをすることで、香り成分は皮膚から毛細血管へと吸収され、同様に血液の流れにのって、体のすみずみにまで届けられます。どちらの場合も、成分は体の各所に働きかけ、効果をあげることがわかっています。
このように、アロマテラピーはまず香りを嗅ぐことによって効果があり、さらにお風呂やマッサージなどのように、皮膚から香り成分を取り込むことで、さらに効果を得ることができる、というわけなのです。
ちなみに、体内に入った香り成分は、体中をめぐった後、尿や汗、はく息などによって体内から排出されるため、体内に残留することもなく、安心して使用することができます。
いかがですか?アロマテラピーのメカニズム、ご理解いただけたでしょうか? 脳と香りの関係は、前にも書きましたがまだまだ研究が始まったばかり。これからどんどん、新しい情報が入ってくることでしょう。
嗅脳とストレスの関係については、この後、上級コースの一回目で、さらに詳しく解説しますので、お楽しみに。また、新しい研究成果などは、今後専科でも伝えていく予定です。興味をもった方、ぜひそちらのコースにおすすみください。
まとめ:
アロマテラピーが心と体の双方に効果的なのは、
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嗅上皮にとどいた香り成分が電気信号に変わり嗅脳に届くことにより、生理活性物質(ホルモンなど)が分泌されるから。 |
A
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鼻から肺へ入った成分が、血液の流れにのって全身を駆け巡るから。 |
B
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皮膚から吸収された香り成分が、同様に血液の流れにのって全身を駆け巡るから。なかでもとくに、香りが嗅脳に働きかける力が重要です! |
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